2021年 爆発・火災防止講座~物質危険性の評価試験方法と災害防止対策への応用~QA

2022年2月14日 更新

皆様からいただいたご質問とその回答

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3) 粉じん爆発の試験方法と見方 河霜 努 講師

Q.資料10p:最小着火エネルギーが100mJより大きい場合は、静電着火の可能性が低いとのことですが、そう判断できる根拠についてご教示いただけないでしょうか。
A.下記「4) 危険性評価データの静電気リスクアセスメントへの応用」の回答をご参照ください。

4) 危険性評価データの静電気リスクアセスメントへの応用 山隈 瑞樹 講師

Q.資料12p:火花放電のRA用基準エネルギーを”30mJ”とされていますが、これは産業界では30mJの火花放電が発生することは稀ということなのでしょうか。基準の裏付けとなった文献があれば、勉強のためご教示いただけますと幸いです。
A.W=30 mJというエネルギーは、人体(静電容量C=100pFと仮定)の電位に換算すると、W = 1/2CV2から、V=約25kVとなりますが、これは相当の高電位であり、よほど絶縁をしっかりしないと、ここまで到達することは困難と考えられます。(一般には,人体の現場での帯電限度は20kVと言われています。)
他の金属でも、もしこれより小さい導体になると、たとえば、大きなペール缶程度であれば、30 pFと仮定すると、V=45kVとなりますが、ふつうは30 kVぐらいで
コロナ放電を発生して電荷を緩和するので、ここまで電位は上がりません。
逆に静電容量の大きなものは、単独で存在するものはまれであり、また、完全に絶縁もされないので、高電位になることは難しいと思われます。
災害事例をみても、MIE > 30 mJのものが、静電気で着火したと考えられる例はほとんどありません。
したがって、一般的に,現場での静電気の着火能力は30mJ以下と考えて妥当と思います。
もちろん、MIE > 30mJの物質であっても、接地・ボンディングなどの一般的な静電気対策は講じておくべきです。
それは、粉じんの粒子径分布、水分量などによっては、測定値よりも小さいエネルギーで着火する可能性はゼロではないこと、及び、
放電そのものが人体への電撃や電子機器の誤作動等の原因になるからです。
文献では、「粉じん爆発・粉体火災の安全対策」(オーム社)に最小着火エネルギーを利用した対策例が掲載されています。
回答者の粉じん爆発に対するスタンスは次のとおりです。

MIE < 3 mJ       :何があっても不思議ではない。場合によっては不活性化が必要。
3mJ < MIE < 10 mJ     :入念な静電気対策が必要
10mJ < MIE < 30 mJ   :導体類の接地等で十分
30mJ < MIE < 100 mJ :粒子径分布に小さいものが含まれる場合,工程ごとの分散状況を勘案して対策
100 mJ <MIE < 1000 mJ:静電気で着火は相当困難。高熱体等があれば着火可能性あり。
MIE > 1000 mJ     :静電気で着火は不可能。ヒーター・トーチ以外では着火は無理。