2022年度 防爆電気機器 BasicコースQA

2022年8月3日 更新

皆様からいただいたご質問とその回答

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可燃性物質の爆発危険性の評価・試験方法及び分類方法  河霜 努 講師

Q.P.6「目視で火炎が10cmを超えた場合を着火とする」この定義の出典はなにか。
A.JIS Z 8818 に記載されています。
Q.P.34「混合された可燃性ガスの場合は、各成分の爆発限界が与えられれば、ルシャトリエの法則を用いて近似的に求められる。」
混合ガスの爆発限界について、爆発下限界のみ例示されているが、爆発上限界もルシャトリエで算定可能か。
NFPA69では許容されているが、ISO10156では不可とされている。
A.当協会では、混合ガスの試験を行う場合に爆発上限界の推定として、ルシャトリエの法則を使うことがあります。
ただし、爆発上限界では精度は落ちますので、目安程度にしています。
Q.P.36 TIISではLFLの実測をされているとのことだが、混合ガスの評価を行ったことがあるか。
A.当協会では、混合ガスでも性能及び評価試験を行っています。ホームページの性能及び評価試験を参照ください。

可燃性物質の主な着火源とその性質  山隈 瑞樹 講師

Q.P.3 着火源として機械的火花が挙げられている。
非電気的な着火源について、評価する規格、推奨する手法はあるか。
A.規格はありませんが、単行本”Ignition Handbook” by Vytenis Babrauskas,Fire Science Publishersに豊富に関係論文のデータが引用されています。
Q.P.22(コロナ放電は)帯電物体と先鋭な物体との間の放電
火花放電との差は接地導体の形状の違いに見えるが、「先鋭」と判断する基準(IIC以外のガス・蒸気及び粉じんで着火源として考慮する基準)はあるか。
A.コロナ放電を起こすためには、一般に曲率半径5 mm以下が必要条件になりますが、実際には電圧、接地体との距離・接近速度、電圧上昇速度、電流の大きさなどの条件によって放電の形態が著しく変化します。ただし、「先鋭」な形状のものは、高確率でコロナ放電となります。先鋭なものの例として、釘や針の先端、針金のような細い線、ナイフエッジ、金属製品のバリなどがあります。
Q.グループIIの電気機器
-EPL Gcの最大表面積
-IIA:100cm2/IIB:100cm2/IIC:20cm2
静電気安全指針2007(TR-No.42)では、Zone2の不導体の面積に制限が設けられていないが、TR-No.46との差の理由はなにか。
・ 単に規格の違い?
・ No.46は電気機器について、No.42は不導体単品(電気機器ではない)について適用?
A.国際整合防爆指針は防爆機器だけに適用されるものです。一方、静電気安全指針は一般的な物体に適用されるものです。前者は、防爆機器の検定基準なので強制規格の扱いですが、後者は強制ではありません。いずれもベースとなる科学的データ等は同じはずですが、指針上では数値に若干の差が生じています。これは、安全率の取り方に違いがあるためと考えられます。

防爆電気機器の構造・規格・検定制度の概要  吉原 俊輔 講師

Q.P.3「法では具体的な評価方法を指定していない。」「通常IEC規格などの使用国で標準規格とされている規格を使用するのがよい。」と説明された。
日本国内では以前からJIS C60079-10、最近では経産省ガイドラインによることとされているのではないか。
A.ご指摘のとおりです。
法律や行政通達では、何に以て危険場所を評価すべきなのか指定されていませんでしたが、
近年になってようやく(防爆検定制度の主管官庁たる厚労省ではなく)経産省よりガイドが発行されましたので、
これをご利用になるのが行政の方針に沿ったものとなるでしょう。
Q.P.21 爆発の3要素「燃料」「酸素」「着火源」について、本講義では酸素以外の支燃物も要素としている。
・ 違いはなにか。
・「燃焼」と「爆発」で区別しているのか。
A.化学的技術論で燃焼の違いについてまでも評価するのであれば支燃性物質の違いも議論すべきですが、
当該講義におきましては、燃焼という現象をわかりやすくご説明するための一つの「要素」として取り上げただけですので、
違いについて特に意識したものではありません。

爆発危険個所の分類方法及び防爆機器の選択方法  山隈 瑞樹 講師

Q.P.4「IEC60079-10:2015は近くJIS化。(2008版の改正)」
IECにならって-10-1/-10-2に分冊されるのではなく、JIS60079-10のまま改正されるのか。
A.詳細な情報は入手していませんが、国際規格に沿って分冊される可能性が高いと思います。
Q.P.4「IEC60079-10:2015は近くJIS化。(2008版の改正)」
改正される見込み時期はいつごろか。
A.関係者から改正の予定があることは聞いていますが、具体的な時期は聞いていません。
Q.P.4「IEC60079-10:2015は近くJIS化。(2008版の改正)」
IEC ed3(2020)ではなくed2(2015)に準じた改正になるのか。
A.現時点で関係情報は入手していません。
Q.P.8「危険な体積とは、LFLと等しい濃度で0.1m³以上」
 本定義の出典/根拠はなにか。(IEC ed2 4.3 Note1の「例示」は「平均が50%LFLで、0.1m³未満か空間の1.0%未満」でゾーンNE。)
A.安全率の考え方による差異です。IEC ed2 4.3 Note1では安全率を0.5としています。濃度にあいまいさがなければ安全率1.0、すなわち100%LFLで問題ありません。
Q.P.8「危険な体積とは、LFLと等しい濃度で0.1m³以上」
開放空間または閉鎖空間の容積によらず0.1m³でよいのか。
A.開放空間であるか閉鎖空間であるかにかかわらず、放出源の周囲又は近傍0.1m³と考えるのが妥当です。
Q.P.8「危険な体積とは、LFLと等しい濃度で0.1m³以上」
危険の基準(定義)とその出典はなにか。(対人?被害の大きさ?など)
A.明確な定義はありませんが、IEC規格の趣旨から0.1 m³を危険/安全の閾値と考えるのが妥当と思います。なぜなら、濃度がLFL相当かつ体積0.1 m³での爆発圧力及び熱量は相当小さいので、損害は軽微と考えられるからです。しかも着火するためには相当のエネルギーを必要とします。しかし、”NE”が表記されているときは、放出源の周囲には0.1 m³の可燃性領域が存在するものとして安全対策を講じることが望ましいと考えられます(例えば、放出源の直近からは着火源となるものや、可燃物を排除しておく)。
Q.P.9「希釈度:高」-「有効度:可」のフローが「ゾーン1(ゾーン0NE)」を経由
「ゾーン1(ゾーン0NE)」を経由する必要があるか。IEC/JISの誤記ではないか。
A.ご指摘のとおり経由する必要はありません。スペースに余裕がなかったため矢印がボックスに重なってしまったものです。
Q.P.12「放出が1時間/年未満で、爆発可能領域が限定的である場合は、「非危険場所」とみなしてよい。

本記述の出典/根拠はなにか。(TR-No.44附属書2-AAPI505RP(ならびにEI15にも)上記の記述は見つけられなかった。

A.非危険場所(ゾーン2 NE)=(放出時間が10時間/年未満、かつ、可燃性領域が0.1m³未満)の考え方に沿って、一例を挙げたつもりだったのですが、誤解を招きかねない表現でしたので取り消します。
Q.P.34 比重1.0を超えるとき換気速度は1/2で評価(p.24(IEC C.3.4))するのではないのか。
A.「換気速度は風速の1/2を想定する」ので、実際の風速は0.5~0.6 m/sであったということです。
スライドに風速uw=0.3 m/sとあるのは、換気速度uwの誤記です。
Q.P.36「上方への拡散は少ないものとし…」と説明された。
「重い」要素はFig D.1の曲線の選択で織り込み済みであり、その結果の3mをさらに減じる必要はあるか。
A.この例題はIEC規格に記載されているものを引用したものです。チャートから得られた距離は最大値を意味しますが、比重の重いガスは上方よりも水平面又は下方に強く拡散していく傾向にあることを考慮したうえで、水平面に最大距離である3mをとり、上方の距離をその1/2に減少しているものと思われます。ガス・蒸気の挙動からみて不自然ではないと思います。
Q.P.36 「上方への拡散は少ないものとし…」と説明された。

1.5mの定量的根拠はなにか。

A.IEC規格には、「このチャートは、連続方程式を基に開発されたもので、分散距離がX軸の平方根に比例すると仮定した計算流体力学(CFD)シミュレーションを行い、その結果をこの規格の目的に合わせて修正したものである。」との注記(note)があることから、シミュレーション結果を根拠にしたものと思われます。なお、現場での範囲設定においては、細かな数値ではなく、0.5 m~1 mを単位として分けていくほうが実用的なので、安全側を考慮して、より大きく、かつ、キリの良い数値とすることがよくあります。
Q.P.42 拡散性放出及びジェット放出について評価
 危険距離は厳しくなる拡散性だけ評価すればよいのではないか。
A.例示として二つの放出を提示してしますが、実際の適用においては可能性の高い放出のタイプを選択することになります。
ジェット放出を考慮するのは、高圧でのガスの放出であるからです。
Q.P.42 拡散性放出及びジェット放出について評価
拡散性、ジェットに加えて「重いガス」としての評価は不要なのか。またその理由はなにか。
A.「重いガス」放出は水平面での拡がりが顕著な場合を想定しているので、放出点が低い位置(地表面に近い)にある場合には、「重いガス」での評価を行えばよいと思います。
Q.P.43「放出点が高いところにあるので、放散は「トウホウセイ」で評価」と説明された。
「トウホウセイ」とはなにか。
A.等方性です。あらゆる方向に平等に拡散するという意味で使いました。
Q.P.43 放出点が高所の場合に等方性となる理由はなにか。
A.屋外で高さが4mある一方で危険距離は1~2mと短いので、放出点の周囲の状況からみて、風はあらゆる方向から吹き抜けていき、これによってガスは比重に関係なくあらゆる方向に放散していくとして仮定しても差し支えないと考えられます。
もし、風通しの悪い場所なら、下向きに地表面までを危険範囲に入れるのがよいかもしれません。このように、実用的なゾーン設定にあたっては、現場の状況をよく知る人をチームに入れて検討するのが望ましいです。