合格品の補修(電動機等)

防爆構造電気機械器具の型式検定に合格した電動機の固定子巻線の巻き替えに係る取扱いの詳細について

 この文書は、「防爆構造電気機械器具の型式検定に合格した電動機の固定子巻線の巻き替えに係る取扱いについて(お知らせ)」を補足し、取扱いの詳細及び留意事項を示すものです。
なお、本文書中の「補修」とは、防爆構造電気機械器具の型式検定に合格した電動機(以下、「電動機」という。)の固定子巻線の巻き替えを意味します。また、「原状復帰」とは型式検定合格時の図面に基づき、当初の材料、形状、寸法の構成部品を用いて補修を行うことで、「改造」については、補修に用いる材料等の変更により、電動機に構造変更がなされることを意味します。また、原状復帰されたことが確認できない補修を行った場合も改造として取扱います。

1.補修に関する分類とその取扱い

 補修された電動機は、法令上、引き続き電気機械器具防爆構造規格(以下、「構造規格」という。)に適合させる必要があります。電動機の補修については、有効な型式検定合格証の有無及び補修実施者の違いにより、下表のように分類することができます。
ケース 型式検定合格証は有効か? 補修の実施者は製造者か? 補修は原状復帰か?
又は原状復帰を確認できるか?
有効製造者原状復帰
有効製造者改造2
有効製造者以外原状復帰
有効製造者以外改造
失効1製造者原状復帰
失効製造者改造
失効製造者以外原状復帰
失効製造者以外改造

備考 1.「失効」には、単品検定に合格したものも含む。2 の「単品検定について」を合わせて参照。
備考 2.「改造」とは、原状復帰したことが確認できない。現状復帰できない場合を含む。

ケース①について

 製造者は、補修対象の電動機の図面を有していることから、設計どおりに補修すること(原状復帰)が可能です。図面に記載されていない箇所の設計変更は原状復帰に含まれます。合格証が有効であることから、特段の事情、要請等がない限り、型式検定機関である当協会は関与しません。

ケース②、④、⑥、⑧について

 電動機は、原則として原状復帰によって補修することとなりますが、以下の場合、原状復帰としては取扱うことができないため、「改造」として取扱います。現行の検定制度の枠組みにおいて、引き続き構造規格に適合させるためには、単品検定の申請をして型式検定合格証を取得する以外に方法はありません。
・検定合格時と異なる材料を用いた。
・検定合格時と性能は同等であるが異なる部品に交換した。
・検定合格時の図面が入手できなかったため、原状復帰できたかを確認することができなかった。
・何らかの理由で構造を変更する改造を行った部分がある。

ケース③について

 補修を行う者が当該電動機の製造者以外であっても、製造者から補修を受託し、図面や部品の提供を受けるなど、製造者と緊密な連携を図りつつ原状復帰として補修する場合は、ケース①と同様に扱うことができます。製造者以外の者が補修を行い、現状復帰できたどうか確認できない場合は、「改造」として取扱われ、ケース④となります。

ケース⑤~⑦

 合格証が失効して有効な合格証がない場合、電動機の補修を行う者が製造者か否かに係わらず、現行の検定制度においては、補修した電動機が構造規格に適合することを明確にする手段を失います。この場合、単品検定で型式検定合格証を取得するのが唯一の方法になります。
 再度検定を取得する際の注意点は以下のとおりです。
・申請の時点で有効な工場電気設備防爆指針(以下、「防爆指針」という。)が検定の基準として適用されるので、失効した合格証に適用された防爆指針と発行年が異なっている場合、構造変更が必要になることがあります。
・少なくとも合格番号が変わるため、表示内容を変えた合格標章に貼り替える必要があります。なお、単品検定に合格証している場合でも、再度、補修を行う場合は、「有効な合格証がない場合」として取扱われますので、再度単品検定を受ける必要があります。

2.単品検定について

 通常、防爆構造電気機械器具は、型式検定として検定を実施しますが、1 台のみ製造する場合、単品検定として検定を行うことが可能です。なお、単品検定については、機械等検定規則第 8 条第 4 項に規定されています。

型式検定と単品検定の違い
型式検定 単品検定
製造できる台数合格証の有効期間内であれば制限なし1台限り
製造検査設備等1不要
あらかじめ行った試験の結果を記載した書面2不要
同一型式含めることが可能不可
合格証の有効期間新規又は更新検定に合格してから 3 年間なし
更新申請の可否不可

備考 1.機械等検定規則第 6 条第 1 項第 3 号のイからニに示す全てを指す。
備考 2.機械等検定規則第 6 条第 1 項第 4 号を指す。

上表に示すように、型式検定と比較して単品検定は、1 台しか製造できない点を除けば、製造検査設備等を有さなくてもよく、また、あらかじめ行った試験の結果も要求されません。このため、以下に挙げる機器を単品検定で申請することが可能です。
 ・合格証が失効した電動機について、巻線の巻き替えを行ったもの
 ・電動機の巻線の巻き替えを、製造者ではなく、他の者(修理業者など)が行ったもの単品検定を申請して合格した防爆構造電気機械器具についての注意点を以下に示します。
 ・銘板や機器本体に製造者の表示がある場合、単品検定合格品の製造者に変える必要があります。
 ・合格標章は、単品検定に合格した内容に変えたものに貼り替える必要があります。
 ・巻線の巻き替えを再度行う場合、改めて単品検定を申請して合格する必要があります。
 ・単品検定の基準は、型式検定と同じく、現に有効な工場電気設備防爆指針が使用されます。

3.検定以外に構造規格に適合することを明確にする方法

 ケース②、④~⑧において、補修した電動機が現在の検定の基準には適合しない場合、また、当該基準に適合するように改造ができない場合、当協会は試験等を行った上で引き続き構造規格に適合することを証明する文書を発行します。
 労働安全衛生法第 42 条(譲渡等の制限等)では、危険場所で使用する機械等は厚生労働大臣が定める規格(電気機械器具防爆構造規格)を具備しなければ、譲渡、貸与又は設置できないとあり、これに適合することを検定以外の枠組みで第三者証明するものです。
 本方法の場合、合格した当時の検定の基準を適用するため、原則として改造の必要はありません。

防爆構造電気機械器具の補修に伴う電気機械器具防爆構造規格適合証明書の発行についてはコチラをご覧ください。>>